
はじめに
生成AI(LLM)は便利です。
プロトタイプもすぐ作れる。だからPoC(概念実証)は回る。
でも、多くの会社では、PoCで止まり、先に進めません。
大事なのは、PoCをする前に、本番に必要な条件(回す設計)を揃えることです。
この記事では、PoC止まりを抜け出すための判断軸と、実務で使える手順を“再現できる型”を紹介します。
PoCが止まる本当の理由

PoCが進まないとき、表面上は「モデルが微妙」「精度が足りない」に見えがちです。
でも、多くの場合のボトルネックは別にあります。
- そもそも“何を成功とするか”が曖昧
- 誰が決めるのか(意思決定)が曖昧
- 現場が使う導線がない
- リスクとコストが後出し
- 結果が閉じて味方が増えない
まずは、止まりポイントを短時間で見つけるための「判断軸」を置きます。
✅PoC→本番につなげる「5つの判断軸」早見表

特に効くのは 以下のような「体制」と「運用(リスク+コスト)」です。
- PoCリーダーは 推進力がある人 を置く(前に進める役)
- メンバーか報告先に 経営層へコミットできる人 を入れる(判断が速くなる)
- 運用設計の中で、リスクとコストを先にレンジで積む(後出しを防ぐ)
運用の3レイヤ
運用を、次の3レイヤとして一体で設計します。
- レイヤ1:業務導線(使う)
- 誰が、いつ、どこで、何のために使うか
- 迷わない手順(3ステップ程度)
- レイヤ2:ガードレール(守る)
- ルール(扱ってよい情報・ダメな情報)
- ログ(入力/出力/操作)と逸脱対応、例外処理
- レイヤ3:採算(払える)
- PoCコスト(短期)と本番コスト(月次)の両方
- 運用工数(問い合わせ・改善・教育・監視)の見立て

✅運用3レイヤの“決めること”ミニ表
| レイヤ | PoCで最低限 | パイロット(限定運用)で必要 | 本番で必要 |
| 業務導線(使う) | 対象業務の仮決め | 利用者・頻度・手順固定 | 教育・定着・問い合わせ導線 |
| ガードレール(守る) | 禁止ラインの仮置き | ログ方針(入力/出力/操作)+逸脱時の止め方 | 例外処理・監査説明・継続改善 |
| 採算(払える) | PoC工数をレンジで仮置き | 本番の月次コストを仮置き | 予算化・運用体制の固定 |
手順
ここからは実務の進め方です。
ステップ0:PoCを“本番候補”と“学習用”に分ける
- 本番候補:現場で繰り返し発生する業務(毎日/毎週など)
- 学習用:技術検証・アイデア出し(本番ルートとは別管理)
ステップ1:体制を決める(ここが最初の分岐)
- PoCリーダー:推進力がある人
- 経営コミット:メンバーか報告先に 経営層へコミットできる人
もし「進める人」または「決める人」が不在なら → そのPoCは本番候補から外す。
(技術の問題ではなく、意思決定の問題で止まるため)
ステップ2:成功条件を“1行”で固定する
例(架空):
- 「問い合わせ対応の初動文章を作る時間を短くする」
- 「社内文書から根拠付き回答を返し、確認工数を減らす」
ステップ3:運用3レイヤを決める
ここが意思決定の中心です。
- 業務導線(使う):誰が、いつ、どこで使う?
- ガードレール(守る):禁止ラインは?ログ(入力/出力/操作)はどう残す?逸脱時はどう止める?
- 採算(払える):PoCコスト(数十〜数百時間など)と、本番月次コスト(運用工数含む)は?
ステップ4:パイロット(限定運用)を設計する
- 対象ユーザー:少人数(数名〜数十名など)
- 使う範囲:業務1つに絞る
- 逃げ道:困ったら人に戻す導線(止めても業務が回る)
- 改善:週1回など短時間でレビュー(改善を前提にする)
ステップ5:結果共有で“仲間”を作る
PoC結果を担当者内に閉じないのが重要です。
- 成果:何が良かったか(レンジで可)
- 課題:どこが詰まったか(運用3レイヤで整理)
- 次:本番に向けて何が必要か(コストと体制を含める)
「本番運用へつなげてほしい」と意見をくれる仲間を増やすことはすごく大事です
現場・関連部門・管理側のどこでもOK。賛同者がいると、意思決定が進みます。
架空ケースで当てはめる
架空ケース:
従業員数が数百〜数千規模。
生成AIのPoCを複数回実施し、デモは好評。
しかし本番運用に進まず、PoCが増え続けていた。
何が起きていたか(典型)
- リーダーが調整型で、推進力が弱く決めきれない
- 経営層にコミットできる人が関与せず、稟議が遅い
- 運用のガードレール(ルール・ログ・逸脱対応)が曖昧で、現場が怖くて触れない
- 本番の月次コスト(運用工数)が後出しになり、途中で現実に負ける
- PoC結果が共有されず、味方(本番化を望む声)が増えない
どう直したか(順番が重要)
- 体制を先に直した
- 推進力のあるリーダーを任命
- 報告ラインに経営コミットできる人を配置
→ 意思決定が速くなり、「次」が決まる
- 運用3レイヤをしっかりと設定した
- 業務導線:対象業務を1つに絞り、手順を固定
- ガードレール:禁止ライン、ログ(入力/出力/操作)、逸脱時の止め方を仮置き
- 採算:PoCと本番(月次)のコストをレンジで仮置き
- 社内共有で仲間を作った
- 「本番につなげたい」という声を集め、協力者を増やした
→ 本番化の合意形成が楽になった - 成果+課題+次の打ち手を1枚にまとめて共有

まとめ

- 本番は「作る」より「回す」。止まる原因は多くの場合、運用条件不足。
- 判断軸は5つ。特に効くのは 体制(意思決定) と 運用(リスク・コスト込み)。
- 運用は3レイヤ(使う・守る・払える)を設定。
- パイロットと結果共有で、賛同者を増やしながら本番化する。
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