はじめに
ビジネス環境において、AIを活用して自社データを学習させ、より付加価値の高いものを生み出したり、業務効率化を図ることは非常に重要です。特に、OpenAI APIとAzure OpenAIのどちらを選ぶかは、多くの企業にとって重要な選択です。
これらのプラットフォームは、それぞれ独自の強みを持っており、選択次第で業務効率やコストパフォーマンスが大きく変わる可能性があります。
本記事では、OpenAI APIとAzure OpenAIの特徴とメリットを比較し、あなたのビジネスに最適な選択肢を見つける手助けをします。
OpenAI APIの特徴
OpenAI APIは、OpenAIが開発した最先端のAIモデルを、開発者が自身のアプリケーションやサービスに組み込むために利用できるAPIです。
主な特徴としては、以下の点が挙げられます。
- 高度な自然言語処理能力：文章の生成、要約、翻訳、コード生成、画像生成など、多岐にわたるタスクを高精度で実行します。
- 柔軟なカスタマイズ：ユーザーのニーズに合わせてモデルを調整できるため、特定の業界や用途への最適化が可能です。
- 豊富なドキュメントとコミュニティ：多くの開発者が利用しており、サポートが充実しています。
Azure OpenAIの特徴
Azure OpenAIは、Microsoft Azure上で提供されるOpenAIのChatGPT等が利用できるサービスです。
主な特徴としては、以下の点が挙げられます。
- シームレスなAzure統合：Azureの他のサービス（Azure AI Search）と容易に連携できたり、Azure内にアップロードした独自の事前学習データを追加することができます。
- 通信の安定性、高可用性とセキュリティ：通信の安定性があること、99.9%以上の可用性を保証しており、業務環境での安定した利用に適しており、また高いセキュリティ基準（閉域化機能、ID認証機能、プライベートネットワーク機能、コンテンツフィルタリング機能など）を備えています。
- エンタープライズ向けのサポート：Microsoftの技術サポートを受けられるため、企業規模での導入が容易です。
どちらを選ぶべきか？
どちらを選ぶべきかは、以下の要素で判断すべきでしょう
- 利用目的
- 必要な機能
- 開発環境
- セキュリティ
1. 利用目的
- 最新モデルへのアクセシビリティ: 最新のモデルをいち早く利用したい場合は、OpenAI APIの方が有利です。Azure OpenAIでは、新しいモデルが利用可能になるまで、少しかかる場合があります(数週間程度)。
- 複数のモデル等との利用: 複数のモデル等を組み合わせて利用したい場合は、Azure OpenAIの方が使い勝手が良いです。Azure portal上で、複数のモデルをシームレスに連携できますし、Azureの他のサービス（Azure AI Search）と容易に連携できます。
2. 必要な機能
- データガバナンス: 機密性の高いデータを扱う場合は、Azure OpenAIの方がデータガバナンス機能が充実しています。
- コンプライアンス: 厳しいコンプライアンス要件を満たす必要がある場合は、Azure OpenAIの方が対応しています。
- 大規模なワークロード: 大規模なデータセットの処理や、高負荷なワークロードを処理する場合は、可用性が高いAzure OpenAIの方が適しています。
３. 開発環境
- Azure環境: すでにAzure環境を利用している場合は、Azure OpenAIの方が開発・運用が容易です。
- オンプレミス環境: オンプレミス環境で利用したい場合は、OpenAI APIを選択する必要があります。
４. セキュリティ
- 高度なセキュリティ: Azure OpenAIはAzureクラウド環境内で閉域化させることで、プライベートネットワークに閉じた形でデータのやり取りを行うことができる。また、高度なセキュリティ要件を満たす必要がある場合は、Azure OpenAIの方が推奨されます。一方、OpenAI APIの場合、モデルにリクエストを送信する際に、一度インターネットを経由するため、データが傍受や漏洩のリスクがあります。
Azure OpenAI サービスのデータ、プライバシー、セキュリティについて（公式ドキュメントより抜粋）
プロンプト (入力) と補完 (出力)、埋め込み、トレーニング データ:
- OpenAI モデルの改善には使用されません。
- Microsoft またはサードパーティの製品やサービスを改善するために使用されることはありません。
- リソースで使用するために Azure OpenAI モデルを自動的に改善するためには使用されません (トレーニング データを使用してモデルを明示的に微調整しない限り、モデルはステートレスです)。
- 微調整された Azure OpenAI モデルは、お客様専用にご利用いただけます。
Azure OpenAI サービスは Microsoft によって完全に制御されています。Microsoft は Microsoft の Azure 環境で OpenAI モデルをホストしており、このサービスは OpenAI が運営するサービス (ChatGPT や OpenAI API など) と対話しません。
https://learn.microsoft.com/ja-jp/legal/cognitive-services/openai/data-privacy?context=%2Fazure%2Fai-services%2Fopenai%2Fcontext%2Fcontext
その他
- サポート: 日本語でのサポートが必要な場合は、Azure OpenAIの方が充実しています。
- コミュニティ: 活発な開発者コミュニティに参加したい場合は、OpenAI APIの方が規模が大きいです。
まとめ
OpenAI APIとAzure OpenAIは、それぞれ異なる強みをもっています。
それぞれのサービスの特徴とメリット・デメリットを理解した上で、ご自身の利用目的や環境等に合致するサービスを選択することをおすすめします。
最後に自分でAzure OpenAIを構築したい人向けの本を2冊紹介します。
「Azure OpenAI ServiceではじめるChatGPT/LLMシステム構築入門」
>>【書評】Azure OpenAI ServiceではじめるChatGPT/LLMシステム構築入門
「Azure OpenAI Service実践ガイド ～ LLMを組み込んだシステム構築」
